会社に退職届けを出すと、ほとんどの場合、会社は引き止めようとします。
「君がいないと会社は困るんだよ」と情に訴えたり、「君なんか他の職場では絶対に通用しないよ」と脅しをかけたりするでしょう。
しかし、ここで負けてしまってはいけません。
そのようなときには、「引き止められないですむ退職理由」を提示するとよいのです。
では、どのような理由ならば、引き止められずに円満に退職できるのでしょうか。
目次
そもそも会社を辞めるのに理由は必要なの?
辞めるのは、原則として本人の自由
まず、基礎的なことを確認しておきましょう。
会社を辞めるのは本人の自由です。
憲法22条の「職業選択の自由」からもそのことは明らかです。
奴隷ではないのですから、自分で「辞めたい」と思ったら、特別な理由を提示することなく「一身上の都合」で会社を辞めてもいいのです。
民法では、雇用期間の定めがない労働契約の場合はいつでもその契約を解除することが可能とされています。
その時に理由は必要とはされていません。
できれば、納得できる理由を示したい
退職して他の職場に移ろうとする場合は、新しい職場が現在の会社と関係を持っている可能性も考えておきましょう。
今の会社の人に恨まれながら辞めてしまうと、あとあと不都合なことが起きるかもしれません。
ですから、会社を辞めても人間関係は続くという気持ちで、円満な退職をめざすことが重要です。
そのためには、上司や同僚が納得する退職理由を告げて他の人に仕事を引き継ぎ、迷惑をかけずに職場から去るように心がけたいものです。
会社を辞めたい!どうやってやめればいいの?
直属の上司に言おう
会社を辞めようと思った時は、まず、直属の上司に伝えるべきです。
このとき、周囲に人がいるデスクのそばで話すことは避けましょう。
上司としては、1人の社員の退職が他の社員の退職願望に火を付けることを懸念します。
そのため、他の社員に話を聞かれる危険性がある場所では退職を伝えてはいけません。
上司に「お話があるので、よろしければ、お時間を作っていただきたいのですが」と切り出して別室で話しましょう。
引き止められるものだと思っておこう
会社にとって社員とはコストをかけて雇い育成している人材であり「財産」なのですから、できる限り辞めてほしくはありません。
辞めるとなったら、引き止めるのは当然です。
特に直属の上司は部下が退職すると会社内での評価が下がってしまいますから、言葉を尽して何としても引き止めようとするでしょう。
「相談」だと思わせてはいけない
上司に伝えるのは退職するという報告です。
はっきりと「辞めます」と言うべきです。
それなのに「辞めようと思っているのですが」などと言葉を濁らせると、上司は「退職の相談」だと理解します。
引き止めようとして、上司は「辞めないでもう少し頑張ろうよ。
君には本当に期待しているから」などと言うのです。
その結果、心が揺らいで辞めにくくなってしまうことがあります。
引き止められない退職理由とは
退職理由として会社に伝えることは、会社にはどうしようもない個人的な理由がおすすめです。
以下に引き止められにくい退職理由を挙げます。
親の介護・看病
親の介護や病気は仕方のないことですから、そのために退職したいと言っても会社は引き止められないでしょう。
せいぜい「誰か他の人はいないの?」と尋ねる程度です。
「はい、兄弟はどうしても無理だといいますし、私が介護(看病)しなくてはいけないのです」と言われたら、上司には返す言葉もありません。
しかし、この理由も万能ではないことを知っておきましょう。
実際に親が病気であれば使える理由ですが、親が元気な場合は、実家が会社の側にあったり他の社員が親のことを知っていたりすると、ウソだとバレてしまう可能性があるのです。
結婚・出産
本当に結婚や出産を控えているのであれば、これらの退職理由ならば引き止められずに笑顔で退職できます。
ただし、産休制度が充実した会社や保育園が整備されている職場などでは、「育児に専念したいので」などという説明が必要になることもあるでしょう。
また、職場の雰囲気によっては他の社員から「お祝い」を渡されることもあります。
気の小さい人は「なんだか悪いなあ」と精神的な負担を感じてしまうかもしれません。
家業を継ぎたい
実家が自営業の場合、親の跡を継がなくてはならないという理由も有効です。
もちろん、この場合もそう言いながらすぐに他の会社に転職すると「ウソだった」と言われることがあります。
できれば、実際に家業を少しの間手伝ってから転職すると疑われずに済みます。
やりたいことがあるから勉強したい
自分の人生を考えて資格を取るための勉強をしたいという理由も良いでしょう。
将来のために退職したいという人を押しとどめるのは、他人の人生にブレーキをかけることになりますから、上司も「頑張れよ」と言わざるを得ません。
この理由で退職するメリットは、しばらくたって他の会社に転職したとしても、「それが自分のしたいことにつながるのです」とか「勉強するうちに気が変わったのです」などと言うことができる点です。
会社や職場の不満は言わないこと
職場への不満を退職理由にしてはいけない
退職するというからには、会社に何らかの不満があるのでしょう。
しかし、それをそのまま退職理由とすることは避けるほうが賢明です。
なぜなら、「不満を改善するから辞めないでほしい」と言われたら退職しにくくなるからです。
給料が安いからという理由ならば「それなら給料を上げるよ」と言ってくるでしょう。
職場の人間関係や仕事の内容が嫌だという場合は「では、他の部署に異動させよう」と答えます。
このように、職場への不満を理由にすると、会社側は「そこは改善するから」と説得できるのです。
あとあとまで悪く言われるかも
会社への不満が「給料」であればまだしも、「職場の人間関係」などを理由に退職すると、どうしてもそれが他の社員に伝わります。
そのためにあなたが去ったあとの職場で、他の社員があなたの悪口を言い合うこともあります。
つまり、辞めるときに職場や他の社員に関する愚痴・不満を口にすると、残った社員の感情を逆なでしてしまうのです。
これでは退職しても後味が良くないですね。
引き止められてしまうとどうなるか
転職のために会社を辞めようとしたら、上司に待遇の改善を提案されることもあるでしょう。
そうなると、退職の意思がそれほど強くない人の場合、退職を思いとどまってしまうことも考えられます。
待遇改善というカードで引き止められてしまったのです。
しかし、本当に待遇が改善されるかどうかは疑問です。
もしも、あなただけが待遇がよくなったら、それはそれで他の社員たちの怒りを買うことになりかねません。
「わたしたちは我慢しているのに、あの人だけ良い思いをしている」などと言われて、結局会社に居づらくなることもあると知っておくべきです。
自分の人生を大切に生きよう
会社が辛いのであれば
「今の職場が嫌だ、どうしようもなく辛い」と感じるとき、もしも、自分の頑張りで改善できるようであれば、何らかの努力をしてみるのは良いことです。
しかし、自分の努力や頑張りではどうにもならない職場も少なくありません。
そのような場合は転職も1つの解決方法です。
とりあえず、黙って次の仕事を探してみましょう。
転職サイトなり転職エージェントなりに登録してみればいいのです。
意外に自分に向いた仕事が見つかるかもしれません。
知恵を絞って円満退職をめざそう
転職先が決まれば上手に退職しましょう。
職場からは退職させまいとする圧力がかかりますから、上に挙げたような退職理由を述べて、できる限り円満に退職したいものです。
会社や職場の上司・同僚に気兼ねして転職できないと考える人もいます。
しかし、自分の人生は自分で切り開く必要があります。
他人の顔色ばかりうかがっていては前に進めません。
後悔のない人生を送るためにはどうすればベストか考えてみませんか。